「受け継がれる心」なラストシーンに感動の最終話だった件について

「ハートキャッチプリキュア!」OP&EDテーマ::Alright ハートキャッチプリキュア!/ハートキャッチ☆パラダイス(DVD付)

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 良い1年間でした。プリキュアを1年完走したのはSS以来。最初は「東映アニメーションが本気で力入れるらしいぞ」と聞いて、少し期待度のハードルを高くしながら観始めた本作でしたが、その期待レベルを数段上回る良質の出来でした。


 再集結した「おジャ魔女どれみ」組スタッフの頑張りもさることながら、原画・作画・戦闘シーン演出のハンパ無いレベルの高さ、ファッション部やクラスメートを中心としたサブキャラ/ゲストキャラの掘り下げと彼ら彼女らを巡るエピソードの魅力、「受け継がれる心」を中心とした各種テーマには、結局1年間心臓鷲掴みでした。デューン様@CV緑川光氏の「砂漠化推進」の動機や「憎しみ」の背景が不明、月影一家やクラスメートのその後も不明(故意にぼやかしているのかも知れませんが)など、消化不良な部分もいくつかありました。語られるべきながら語られなかった行間が多過ぎた点も、視聴者にとって親切とは言えません。しかし、それらの短所欠点を補って余りある満足感を得られたのも事実です。


 特に今回の最終話に関して言及したいのは、花咲つぼみ嬢@CV水樹奈々女史以下のプリキュアにとっての「砂漠の使徒を破り、地球を救った」と言うカタルシスを十二分に表現する一方、彼女らにその次の夢や将来を語らせ、プリキュアとしての1年間がその夢に与えた役割を示し、それらの想いを継ぐ者の登場でラストシーンを飾ったという点についてです。


 前回の感想でも少し触れましたが、これまでの戦いでつぼみ嬢達が得たカタルシスは、第48話のような「正義のヒロインとしての完全勝利」など、各々で相応の意義・目的があるものでした。しかし、これに加えて今回の最終話では、それら一瞬のカタルシス全ての先にある長き夢と未来の存在、それを求める姿こそが、彼女らにとって生きてゆく原動力となるべきなのだと言うことを示しています。そして、プリキュアとしてのこの1年間は、彼女らがその境地に至るための経験と醸成の期間であったことが、つぼみ嬢の独白を介して述べられています。シーズンを通してのキャラクターの成長の姿は、キャラクター「本人」達にとっても、その「親」たるスタッフにとっても、観ている視聴者にとっても実に喜ばしいことです。その姿を描くことに成功した本作は、その時点で既に成功作です。


 ただし、本作の真骨頂は、その先の可能性を描いたラストで物語を締めくくった点にあります。つぼみ嬢はその独白の中で「プリキュアの事を人々はいずれ忘れていくでしょう」と語り、公園のシーンと併せて、仲間たちと共に自分もプリキュアの表舞台から去っていく描写がなされます。しかし、時が経ち、最終決戦前に撮られた4人のプリキュアの集合写真がセピア色に変わった頃、一人の少女が写真の前に立ちます。ココロパフュームを手に。


 そのパフュームが昔、誰の持ち物であったかは分かりません。その少女が成長したふたば嬢なのか、つぼみ嬢の娘なのか、それとも他の誰かの孫娘なのか、それすらも分かりません。かつて地球を救ったプリキュアは、薫子さんはもちろん、もしかするとゆりさんも、いつきも、えりかも、そしてつぼみも、もうこの世にはいない世界なのかも知れません。しかし、少女はかつて4人のプリキュアが世界を救ったことを知っているのでしょう。彼女たちの姿を前に、何かの決意と共にココロパフュームを握る手に力を込めるのです。


 そのシーンを観て、第47話のキュアムーンライトダークプリキュアとの決戦前に口にした「それがプリキュアの絆」を思い出しました。たとえ、ブロッサム、マリン、サンシャイン、ムーンライトの4人が消えた世界でも、次のプリキュアが次の世界を救い、そして新しい自分の成長の物語を紡ぐのだなと感じました。


 一つの物語が終わっても、次の物語を紡ぐ者に受け継がれる記憶がある。物語を紡いだ者達の想いの欠片と共に。「ハートキャッチプリキュア!〜受け継がれる心の物語」、TV版49話・劇場版2作を以って今ここに完結。スタッフの皆さん、1年間お疲れさまでした。そして今、万感の想いを込めて、「ありがとうございました」。


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 1年間続けてきた感想も今回が最後になります「ハートキャッチプリキュア!」。脚本:「やりたかったのはBパート!オーラがビシバシなシリーズ構成乙!であります」栗山緑御大、演出・絵コンテ:「動の48話に続き静の49話。お見事でしたSD!」長峯達也御大、作画監督:「ラスト2話のクオリティはまさに馬越神の面目躍如」馬越嘉彦御大という、この顔ぶれを観ることができるのは次はいつだろう…だった第49話(最終話)、「みんなの心をひとつに!私は最強のプリキュア!!」。


 で、結論、「楽しかったよ」。以下、個人的見どころをサクサクと列記。



  • 今回はアバン無しでいきなりOP。このOPも今回で聞き納めか。今更ながら、いい曲と歌詞だったですね。
  • Aパート。前回、プリキュア・ハートキャッチ・オーケストラを喰らったデューン様。流石にラスボスがこれ位で消滅するわけもなく、肉染み憎しみと狂気噴出120%の勢いで最終形態へ。惑星城を破壊しただけではなく、木星のザ・パワー(待て)をも取り込んで巨大化へ。おーい、誰かどこかの天元突破か勇者王を呼んでこい。
  • つか、この化け物と差し違えた薫子さん・キュアフラワー@CV坂本千夏女史って…(^^;。
  • 結局、左肩のヘビメタコは何だったんだろう?。最後は巨大化デューン様の模様に収まっちゃったし。なーんかもったいない。
  • 地球にブチ切れ直接攻撃を仕掛ける巨大デューン様。激震に襲われる地上では、前回に続いて、なみなみ@CV藤井ゆきよ女史と番君@CV置鮎龍太郎氏の2ショット。番君ってばドサクサまぎれに、なみなみの肩に手まわしてやがるし、テメー離れろこのやろー(涙)。しかし、なみなみは最後までスタッフに贔屓されていた愛されていたキャラだったな。分かるけど。
  • コッペ様の作った結界に薫子さん共々一時退避、一息つくプリキュア4。コッペ様マジ万能。
  • 彼女たちの眼前で猛威をふるい続ける巨大デューン様。それに怯むことなく、すぐさま笑顔で反撃開始の先陣を切ったのは、もちろん青色のキレンジャーキュアマリン@CV水沢史絵女史。「笑っちゃうよね。たった14歳の美少女がデューンと戦うなんて」「ちょっくら、地球を守ってこよう!」。ああ、この子は最後までこの調子でムードメーカーを演じ切るんだな。本当にぶれない、芯の強いイイ子だったよ。
  • そしてマリンに続くのが、ボクッ子優等生・キュアサンシャイン@CV桑島法子女史。初登場以来、常に自分の果たすべき役割と順番を弁えた賢い子でした。「えりか、ゆりさんは17歳だよ♪」なんて地雷的なツッコミをやっちゃう、その天然っぷりも素敵よ!。
  • 3番目に飛び立ったのは、プリキュア界の白い武神・キュアムーンライト@CV久川綾女史。第48話の無礼を詫びるブロッサムに対して、微笑みと同時に感謝の言葉をかけるムーンライト姐さん。その一瞬後、武人の顔に戻り、戦地に赴くクールっぷりに改めて◎。
  • そして最後に飛び立つキュアブロッサム。孫娘を含む若い4人の後輩を見送る薫子さんの眼差しが優しい。
  • バスタービーム(違)まで発射する破壊神・巨大デューンに対抗すべく、オーケストラと融合するプリキュア4。「宇宙に咲く大輪の花」無限の力と無限の愛、そして星の瞳を持つプリキュアハートキャッチプリキュア無限シルエット降臨。慈愛に満ちた口調で「喰らえ…この愛!拳パンチ!」と言い放つ、そのギャップっぷりに大笑い。
  • …と思ったら、繰り出されたパンチはとても優しい。Bパートで詳細は明らかにされますが、無限シルエットのパンチは、破壊が目的のオーケストラさんの鉄拳制裁とは違い、相手の憎しみを和らげ、与えた愛を以って浄化するものでした。そっかー、「私は最強」って、つぼみ嬢以外にこちらの方も指してたんだな。「幻魔大戦」の幻魔よろしく憎悪と破壊衝動に凝り固まった巨大デューン様も、無限の愛の前についに浄化&消滅。ここでAパート終了。
  • Bパートでつぼみ嬢がデューン様の最後を看取るシーンを回想しながら「せめて、そうすれば…」と言ったのは、デューン様を消滅させてしまったことに対する、贖罪の気持ちがあったのかも知れませんね。



  • Bパート。ここからの後日談は、必見。
  • 惑星城最終決戦から数ヵ月。デューン様の消滅、無限シルエットの力の発動と共に復活した地球。そこでは新しいそしていつもの生活が営まれていた。
  • でも、少しずつかつてとは違うところも。花咲家には次女・ふたば嬢が誕生。明堂院いつき嬢は男装をやめ、髪も少し伸びました。さつきお兄様は組手ができるほど回復し、来海えりか嬢は妹萌えに目覚め、月影ゆりさんは少し顔色が良くなりました(かも)。



  • ここでいきなり、クモジャキーの本体・クマモトさん登場。高知弁キャラなのに何故にクマモト?…クモジャキー+島本和彦御大=クマモトか!?(爆笑)。コブラージャさんの本体も一緒に目覚めたそうで何より。つぼみ嬢達の想像図だけど、サソリーナ姐さん共々、新しい人生を歩んでおられるようで、本当に良かった。スナッキーも元の世界に…って言ってたけど、どこだ?。鳥取砂丘サハラ砂漠?。
  • つぼみとえりかが明堂院家に向かう時に歩いていた道はOPの、中学三人衆が歩いていた公園のシーンは第10話の、ですね。しみじみ。
  • 公園の展望台で、カタルシスダダ漏れ状態のえりか嬢。そんなしょーもないのは彼女だけかと思いきや、何と帰還直後は4人揃ってこのありさまだよ!。
  • 「私たちは凄いことをしてしまった!」。



  • このドヤ顔に勝てるのは、アジア一のドヤ顔GK川島くらいだろーなー。常考



  • 流石にいち早く現実に立ち戻っていたゆりさん、人生目標を見失いかけていたえりか嬢に教育的指導。再会した淫獣達によると、こころの大樹の再生も順調とのこと。しかし、一度折れてしまった大樹を育て守るのは自分たち人類の仕事、無限シルエットの強大な力に頼るのではなくと諭す年長者。ここら辺、プリキュアの力は、「どれみ」における魔法の在り方とかなり被ってるなあ。
  • これからの人生や夢に話が変わり、それぞれの夢を語りだすプリキュア達。「人生って深いっしゅ」えりか嬢はプロのファッションデザイナーを目指し、「肝心なことは秘密だよ」いつき嬢は明堂院流の武術を続けながら色々なことにチャレンジ、「生活かかってるしねえ」ゆりさんは自分の人生をもう一度見つめ直し、「まず視力回復しないとな」つぼみ嬢は宇宙飛行士への進路を口にします。プリキュアとして果たすべきことは果たした。彼女達にとって大事なのはこれからの夢であり、将来なのだということか。
  • つぼみ嬢の夢に対するえりかのエール。それへのつぼみ嬢の返答は「私たちは親友じゃありません」「私たちは大親友です!」。おお、「どれみ」の青色大阪娘・妹尾あいこ嬢の名言が今ここに!。何もかもが以下略。



  • 一同、未来への想いを語り終えるとともに、一人また一人と「約束の場所」からフェードアウト。前述の通り、ここからは各自が自分たちの路を歩んでいくと言うことの暗示なのでしょうね。
  • ギターver.のOPインストをバックに語られる、つぼみ嬢の独白。それは彼女の心の言葉であり、また決意でもある。これからの自分の夢・人生の歩みへの。プリキュアであったこの1年間に対する感謝そして別れへの。

「私達4人のプリキュアが砂漠の使途を倒し、地球を守ったことを、人々は時が経つにつれて忘れていくでしょう。でも私は、えりか、いつき、ゆりさんとプリキュアになって走り続けたこの1年を、決して忘れません」
「なぜなら、私を成長させ、未来の道まで見つけさせてくれた、かけがえのない大切な宝物だからです」

  • つぼみ嬢の独白が終わり、全てのプリキュアが物語から姿を消し、つぼみ嬢の使っていた机の上には、第45話で最終決戦に向かう直前に多田かなえ嬢@CV小島幸子女史から撮ってもらった、4人のプリキュアの記念写真だけが残ります。
  • 時が過ぎ、写真がセピア色に変わる頃、4人の思い出の前に立った一人の少女。次の紡ぎ手に委ねられるプリキュアの物語。そして流れる最後のED、最後のエンドカード。馬越御大直筆のイラストには、つぼみ達と共に「ありがとう」の五文字。



  • 今、感想を書き終えて色々と心中を去来するものがあります。今朝視聴する前までは、前半部の「受け継がれる何か」とは別に、もう少しリビドーダダ漏れなカオスなこととか、「魔法少女まどか★マギカ」との対比とか、「スイートプリキュア♪」への期待とかガツガツ書こうと思っていたんですが、何て言うか心情的に無理です。だから一言だけ。
  • この一年、「ハトプリ」を観続けて本当に良かった。

 ここで「【エルシャダイ】ハートキャッチエルシャダイ!【MAD】」を紹介。

この日に公開したうp主の英断に敬意を表して。